友人に薦められて、週末のレイトショー回を観賞。観客は30人ほど。30、40代くらいの人が多かった印象でした。
公式サイト → http://wwws.warnerbros.co.jp/americansniper/
スゴい映画だった!
実話を元にした話ということ以外は前知識とか何もなしで見ましたが、見た後しばらく余韻から抜け出せず、日常思考に戻るのが困難な映画でした。
正直、戦争に行ったことの僕にはこの映画がリアルかどうかはさっぱり分かりませんが、それでも扉を一枚通過したら撃たれるかもしれない、車に乗っていたらスナイプされるかもしれない、現地の人がいつ牙をむくか分からない、戦場において常に気を抜くことのできない緊張感というのはひしひしと伝わってきました。
そしてそれは殺される側の恐怖だけではなく、殺す側の恐怖も含まれる。味方を守るためには、相手が子どもであっても爆弾を持っているならば躊躇なく殺さねばならない。引き金を引く瞬間はいつ訪れるか分からない。それは想像するだけでとてつもなく怖いことでした。
特にスナイパーという役職はその緊張感が半端ではない。僕は戦闘FPS系のゲームだと、じっと耐えたりする緊張感に耐えきれず、だいたい突撃していって死んでいくプレイヤーなので、主人公の忍耐強さには尊敬の念さえ抱きました。
しかしそんな彼でも、だんだんと精神を病んでいく。それは敵を殺した、あるいは殺せなかったことによって殺された味方への良心の呵責なのか、過酷な極限状況に体が慣れいった代償なのかは分かりませんが、帰国しても心は戦場から戻ってこれない彼を見ているのはとても辛かったです。
少しだけ主人公に自分を重ね合わせていました。希望した業界で働きながらも、人手不足やスケジュールの都合から朝の5時まで働いて10時には会社に行って再び働いていた環境に、ついには体を壊して退職せざる得なかったことに「みんなの役にたてなかった」「選んだことさえやり遂げられない自分はダメだ」と自身を責め続けていた頃の自分を思い出していました。戦場というのはもっとさらに過酷なところなので、おこがましいことですが。
ですがそれ故に、軍を退役した後、他の退役軍人さんたちの社会復帰の手助けをしながら少しづつ人間性を回復していく彼を見ているのはとても嬉しかったです。守るべき人が、守ってくれる人がいることの大切さを改めて気付かされました。
そしてだからこそラストの喪失感はスゴかったです。「やっぱりか」と思いつつも、僕は彼に幸せな時間を長く過ごして欲しかったです。これは元ネタを知らずに見たからこその感想なのかもしれませんが。
いろいろ考えさせられる、考えてしまう映画でした。特にテロが身近に感じられてきた昨今においては自分自身がどう振る舞うかについて。
もちろんただ戦争を描いているだけでなく、映画としてのエンターテインメント性もあり、ちゃんと見ることが出来たのも良かったです。記録やドキュメンタリーではなく「映画」なのですから。