細田守さんの最新作ということで、公開2週目の週末レイトショーで鑑賞。観客は20人ほど。時間帯故か年輩の方が主でした。
公式サイト → http://www.bakemono-no-ko.jp/index.html
前半の幼年期はめちゃくちゃ面白かった。完璧だった。
母親が死に、大嫌いな親戚一同から逃げてきた少年九太と、力はあるものの粗暴でバケモノの中でも浮いている熊徹、二人が出会い心を通わせ、やがて親子にも似た良き師弟関係となっていく物語は、ほのぼのとしていてとて、とても気持ちが良かったです。
渋谷からバケモノの世界への移動の不思議さ、向こうの世界の広さと美しさ、心を通わせ変化していく二人の関係性など、あらゆる要素がテンポよく描かれ、これから何が起こっていくんだろうというワクワク感にあふれていました。
そして舞台が九太が成長した青年期になっても、人間世界とバケモノ世界の間で揺れ動く彼の心情、バケモノ世界の指導者を決める闘いに挑む熊徹、もう一人のバケモノ子である一郎太との対決、そしてラストの心に剣をのくだりなど、一つ一つの要素はとてもよく出来ていました。
また炎の剣や水の鯨など映像的にも美しく、それらを見るだけでも映画館に行った価値はあったと思います。
ただ、幼年期に比べてちょっとばかり駆け足すぎて、全体的に唐突な印象を受ける感じでした。
特に九太が迷うきっかけとなるヒロイン楓や、九太と対比されるはずの一郎太の掘り下げがぜんぜんないので、彼らの行動には「反応が極端すぎるんでない?」と思うことが多々あり、それが主人公の行動にも疑問符を植え付け、イマイチ感情移入できないところが多かったです。
熊徹との触れあいが感動的で印象的だったぶん、なぜ九太が彼らを熊徹よりも優先するか、理屈では分かっても、心情的には附に落ちないといった感じになってしまいました。
個人的にはもう30分から1時間くらい尺を伸ばして、その辺りを補完しつつ、青年期では足りなかった熊徹との触れあい描写を増やしてほしいかなと思いました。でもそうすると長くなりすぎるのか・・
若干の不満点はありますが、全体としてはとても、いい映画だったと思います。むしろ出来がすごく良かっただけに、言いたいことも多かったという感じでした。3時間くらいの超完全版みたいなものが見たいぜ。