短編が読みたいなと思っていたところ書店のお勧めコーナーにあったので購入しました。
- 作者: ナツイチ製作委員会
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/06/26
- メディア: 文庫
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本書は「少年たち」をテーマに7作家が描いた短編小説を集めたものです。僕はこの中でちゃんと作者を知っているのは石田衣良さんくらいでしたが、他の方々も読んだことはなくても作品名は必ずどこかで耳にしたことがあるという作家さんばかりで、豪華なメンバーだなと思いました。
「少年(もしくは少女)」というテーマは僕は大好きです。未完成であり、それ故にとても大きくダイナミックに高く羽ばたくことも、どこまでも限りなく墜ちていくこともできる未来への可能性は、きわめてドラマチックですし燃え萌えします。
大人や社会と本人の純粋さの軋轢、初めての恋や経験に戸惑ったりする青春特有のほろ苦さはいつでも胸に刺さります。
僕が自身で小説を書く際にもよくテーマにします。
なので非常に興味深く楽しんでみることができましたし、どれも面白かったので、それぞれ読んだことのない作者の本も読んでみようかなと思いました。
以下は各作品ごとの感想です。
石田衣良「跳ぶ少年」
この短編集の中で最も気に入った作品です。青春時代の自己の覚醒や回復とかって、体の生理的反応と切り離せないものなんですよね。青春時代には青春時代にしかできない勃起や射精が確かにある。ただそいう話なんで読んできてちょっと恥ずかしかった。
小川糸「僕の太陽」
大人と子供の境を考えたとき、家族とどう向き合うか、付き合うかという問題はデリケートであり、とても大事だと思います。自分の歩む道の幸せと、ある種切り離して父さんや母さんの幸せを考えられたら大人であり一人前なのかなと思いました。
朝井リョウ「ひらかない蛍」
いい話でした。児童養護施設の話なのですが、僕は子供が不幸な境遇にも負けずにお互い寄り添って頑張る話って弱いんですよ。泣き顔文字
辻村美月「サイリウム」
ビジュアル系おっかけの真矢子お姉ちゃんの痛いっぷりが素晴らしかった。ブログに「抱かれたかった」とか書いちゃうとか弟が見たら確かに反応に困るよね(笑
山崎ナオコーラ「正直な子供」
王次郎くんという子供は「こんな子供いねーよ」と思ったが、そのキャラクターの突飛ささえ飲み込めれば、確かにリアルな小学生だなと思った。そのギャップがなんか面白かった。
吉田修一「少年前夜」
「ねえ、わたしたち、早く大人になりすぎた」
「さぁ、どうだろう。俺こどもだった記憶もあんまないんだけど」
十代の初体験SEXってこんな感じなんだろうなと二十代体験者が言ってみる。
米澤穂信「913」
これだけ青春小説というより、ライトな文体の高校生が主人公の暗号解読エンターテインメントだった。トリックはけっこうすぐに当たりがついたけど、もう一つの仕掛けは面白かった。