yukiakiの日記

映画とサッカーと漫画と猫が好きな男の生存確認ブログ 週刊少年ジャンプの全漫画の感想を書いて14年目

森博嗣『少し変わった子あります』感想 とても落ち着いて心地のいい空間にいるようで満たされた気持ちになった

少し変わった子あります (文春文庫)

少し変わった子あります (文春文庫)

フワフワした気分になる小説でした。

大きな事件が起こるわけではなく淡々と主人公と毎回違う場所で毎回見知らぬ女性と食事をするだけの話なんですが、それが妙に心地が良くて、とても落ち着いた気分になりました。

ハラハラドキドキするわけでもなく、知識を得て成長したと実感しているわけでもない。

ただ小説内のその空間で息をしているだけ、そのことだけでふと満たされた感じになるという、不思議な読書体験でした。

「ご飯を食べる仕草にとても品のある女性」というのが共通点なのですが、その姿がとてもイメージしやすく描かれていて感心しました。

それはいそうでいない。とても理想的なファンタジーであるからこそ心地良く、自分を映す鏡になっていたからこそ、いろいろ落ち着いて考えられて面白かったのかもしれません。

作品を包む雰囲気がとても素晴らしかったと思います。それこそ、最後にドキッとする展開がなければとうてい抜け出せなくなるくらいの魔性の魅力がある小説でした。