週間SPAに連載されていたエッセイをまとめたものですが(2016年~2018年)、僕は西原さんの漫画のファンなので、それが全て載った完全版が出るまで待っていました。
元経済ヤクザであった著者の経験を元に描かれる、その時あったニュースを下地として、東南アジアなどの裏経済や人身売買(いつの時代の出来事かはさておいて)、暴力団絡みの金の動きなどを書いた内容はどれも興味深かったです。
告発本というよりは、思い出話を語るように淡々と「自分の常識だとこうなんじゃないかな、昔はこうだったんだよ」と描かれる感じは、普通の告発本などよりもある意味で腑に落ちやすく、衝撃的でした。
特に「金」
最極貧から生きるためだったり、権力者が私腹を肥やすためだったり、内容は様々ですが、人は「金」のために綺麗事など入る隙間無く残忍になったり、違法合法問わず策を巡らせるんだというのは、金にそんなに頓着が少ない自分にとっては「おいおい・・そこまでしなくてもいいだろ・・」と半ば呆れると同時に、圧倒的恐怖でもありました。
正直、西原さんの漫画がなければ、読むの辛かったぜ。
自分の知らない世界、これから交わることもほとんどない世界の話ではありますが、それ故に知識としては触れておいて良かったし、読み物として面白かったです。
ちなみに収録されている中でもっとも好きな西原さんの漫画は「タイの刑務所の水は泥水しか出ないから飲んだ奴はすぐに死ぬ、組長金をバラマいて綺麗な水を確保、同じ房の人にも周るけど皆それまで劣悪な水飲んでたから半分死ぬ、だから組長はPTSDでいつも最高級の水を傍らに置いている」というのをポップに描いた漫画。どうしよもない現実を吐き気を感じさせず読まさせる事のできる西原さんは鬼才だと思います。