平日お昼の回を鑑賞。観客は100人ほど。年齢層はけっこう高め(50代くらいが多かったかな)でした。
この世の中には自分の選択や行動だけではどうにもあらがえない大きな力というものがあり(この映画の主人公すずさんにとっては太平洋戦争や広島の原爆であり、僕等の身近で近いものがあるとすれば東日本大震災など)、それはとてもとても悲しくやりきれないものだけれども、それでも人は生きて行かねばならない、いや、生きていけるんだという事を僕はこの映画を見て思いました。
すずさんは選択をあまりしません。
結婚相手も住む場所も流されて周りの意見に従って決めていきます(これは時代を考えれば仕方がないことでもある)。
唯一発した「広島に帰る」の決意さえ原爆という大きな流れによって絶たれてしまいます。
その生き方は可愛らしくはあるけれど、少し愚かに最初は見えていました。
それでも彼女はこの時代を懸命に生きていきます。
自分の不注意で愛する人と自分自身の一番好きな事である絵を描く右腕を失っても、なお懸命に生きていきます。
その姿はとても心に響いてきて、その生活を見ているだけで涙が出てきました。
そしてだからこそ、最後に少しでも見えてくる光「この世界の片隅で見つけた(見つけてくれた)光」は、とても大きな救いとしてあってくれて本当に嬉しかったです。
しかし原爆の病にかかった妹の事を考えたり、多くの人を失いこの後も片腕で生きていかなければならないという人生を想像したとき、物語は決してハッピーエンドとは言えません。
それでも、すずさんは生きていくのでしょう。物語が終わったこの後もずっと。
そう考えたとき、彼女のそしてあの戦争を生き抜いた人々の根本にある力強さが、眩しくも、誇らしくも感じられる、そんな映画でした。
……友達は見た後1週間は引きづりそうと言っていましたが、その通りだと思いました。