地下鉄の中で、隣の男に「今は晴れていると思いますか」
と訊くと、その男は空も見えないのに窓外をちょっと気にしているみるふりをしながら「天気予報では晴れると言っていましたよ」
と答えました。(つまりラジオの天気予報のインスタントな回答の中に自分の答えを逃げてすませやがったのだ)
ぼくはその男の意見を訊いたので、ラジオの事を訊いたのではありません。腹がたったので蝙蝠傘でその男を刺し殺してやりました。
寺山修司著『自立のすすめ』より「自由だ、助けてくれ」より抜粋
寺山修司の本は中学生くらいの時に読んで、ものすごい衝撃を受けました。「親父を殴り殺せ」「行き当たりばったりで飛べ」など、一見するととんでもないことを言っていますが、そこに含まれる鋭く攻撃的な指摘と、常識や思いこみを打ち破る開放性に、僕は夢中になりました。
「自由という言葉と明日という言葉は似ているのであって、それが現在形で手にはいるということは錯覚か死を意味している」
一つの所に止まらず変化し続けることの厳しさと、だからこその尊い精神性にとても憧れました。
流されずに「自分の意見」を常に持つこと。それは、日常のちょっとしたことになんとなくで流されず、妥協しないことだと思っています(ルーティーンなら自分で選んだルーティーンだとしっかりと把握していることが重要)。
天気というとりあえずのさわりで使われるような話にも妥協したりせずに対応すること、それが「自分の意見」を持ち続けるための日常的な訓練だと思って、すぐになんとなくヤフー天気などを参照するようにはしないと決めているのです。
- 作者: 寺山修司
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2000/04
- メディア: 文庫
- クリック: 9回
- この商品を含むブログ (8件) を見る