第145回直木賞に選ばれていたので興味はあったけれど、なんとなく読んでいなかった作品。今回図書館のお勧めコーナーにあったので読んでみました。
- 作者: 池井戸潤
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/11/24
- メディア: ハードカバー
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本書は中小企業の頑張りを描いた作品だと読む前は思っていましたが、読んでみての感想は、自分たちの「正しさ」を証明する一企業の闘いのお話だと思いました。
本書はとある中小エンジンメイカーの社長が自ら開発したロケットエンジンに転用できる水素エンジンのバルブシステムの特許を取得したところから話が始まります。
そしてそれから描かれるのは、その高い技術を狙う大企業からの裁判、その技術をいかに経営に結びつけていくかの方法を巡る社内対立、システムそのものが実際のロケットに組み込まれるかの厳しい評価試験など、様々な試練です。
僕は理系の学部に進んだ人間なので、1+1=2にならないのは気持ちが悪いというか、我慢ならないとことがあります。
だからこそ、前半の技術が確かなものなのに、それがなかなか日の目を見ない展開はとてもはがゆかったです。
現実は、数学のように割り切れたり解が明確であったりすることは少ないです。各人にはそれぞれ思惑があり、また評価の方法論の難しさもあり、正しく物事が評価されたりすることは希だと思います。
でも、それ故に、主人公をはじめ多くの人間が奮闘し、自らの「正しさ」を証明していく過程は、とても手に汗に握って面白かったです。
「正しさ」を勝ち取るという事は本当に難しい。でも、だからこそ、勝ち取った「正しさ」は、本当に価値があるものだと思いました。
「こんな評価しかできない相手に、我々の特許を使っていただくわけにはいきません」
大きな相手にも、一歩も引かない自分自信への自信を、確かな実力とともに、私も持ちたいです。