- 作者: 朝井リョウ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/03/05
- メディア: 単行本
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今年で校舎がとり壊されることに決まったある高校の卒業式の日を舞台にした、生徒達のオムニバス形式の短編集です。
八章構成なのですが、それぞれのお話にはほとんどリンクがありません。それぞれが独自の学生生活を過ごして、まったく別の卒業のむかえ方をします。
共通するのは「終わって、そして始まる」ということだけです。
そういうそれぞれの個人的な物語があるだけ(“みんな”ではない)という感覚はある意味とてもとてもリアルで印象に残りました。
そして、とても美しくて甘酸っぱい、どこか懐かしい感じがするお話でした。
これは少々びっくりで、僕にはこの作品で描かれるような明確な巣立ちの瞬間、「ああ、あの時僕は少し前に進んだんだ」というような、子どもから大人へと半ば強制的に変化した時、そういった物語はまったく持っていません。
なので、どうしてそんな風に懐かしいと感じたのか考えてみたのですが、「入学」から「卒業」まで学生時代という一つの青春と呼ばれる時を過ごしてきたなかで、決定的に変化していったことは間違いないのだということに思い至りました。
なんというか、「僕もまた「卒業」をして今の自分になったんだなあ」とか思ったのです。
だからこそ、それが凝縮された物語、少年や少女の必死にその時について考える姿勢が胸に突き刺ささらないわけがなかったのです。
少年、少女は卒業しない。だけど僕等は大人になった。とても面白かったです。