- 作者: 伊集院静
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/03/19
- メディア: 単行本
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大人って何だろうと時々考えます。
僕自身の現在の定義としては「『人は孤独である』『人は一人では生きていけない』この二つの真実を矛盾しないものとして受け入れることができるのが大人である」というのが一番近い。もちろん大人のあり方は一つではなく人によって様々であろうし、僕自身もこれからの経験によっては変わっていくだろう。
「大人は背中で語る」というが、僕もその意見は賛成だ。だけど背中で語れる人間は決して多くはないし、その背中を見れる人間は、その人に近いわずかな人達だけだ。
僕はこの本は伊集院さんの背中だと思う。酒を愛し、墓参りなどの人間関係における形式を重んじて、しかし究極は自分の足で歩く一人の大人。伝わり易くキレのある文章でこのエッセイはこの本は一人の男の背中たりえていると感じた。
もちろん時にはひどく的外れなことも言うし、古すぎて苦笑いしてしまうような意見もありました。しかし間違えることがあるのもまた大人です(否、僕の方が僕が間違っているかもしれない)。
でもそれ以上に、まったく世代も生き方も違う僕にとって、そういう見方や考え方もあるのかと突き刺さる、深く物事を洞察した興味深い文章が多く、面白い本でした。
特に「妻と死別した日のこと」という「人はそれぞれ事情をかかえ、平然と生きている」で締められる章は、まぎれもない名文だった。ここだけでも多くの人に読んで欲しいと思いました。