yukiakiの日記

映画とサッカーと漫画と猫が好きな男の生存確認ブログ 週刊少年ジャンプの全漫画の感想を書いて14年目

平田オリザ『幕が上がる』感想 どこまでも行ける彼女たちがとても羨ましかった

書店で平積みされていたので、表紙とタイトルから何か面白そうな青春小説だなと思って購入(青春小説好きなんです)

幕が上がる

幕が上がる

僕は高校演劇という世界は僕はよく分からないですが、学生時代には自主制作映画を監督していこともあり、主人公さおりの心情や、作品を作っていく過程での仲間との関係性の変化、それに付属するいろいろな思いには、とても感じ入るものがありました。

『舞台こそが現実だ』これは比喩とかではなく、確かにそう思える瞬間があるのが僕には分かります。自分の作品を上映中に後から見ていたとき、自分の意図通りにみんなが笑ってくれたり、反応してくれていたとき、撮影時のいろいろな思いが蘇ってきて、この瞬間が永遠に続けばいいのにと思ったことがあります。その時の感情を懐かしくも思い出すことができました。

だからこそ、僕はこの小説の中で、みんながみんな一つの目標に向かって頑張っていく姿勢に、見ていてとても気持ち良くて爽やかな気持ちになれると同時に、嫉妬にも似た羨ましさを感じました。

彼女達は「本気のさらに上の本気」を出して演劇に取り組みます。その姿勢やそこから生まれる全体の一体感は、僕の頑張りの不足もあって学生時代は手に入れることができないものだったなあと。もっと頑張っていれば、彼女達のように「どこまでも行ける」ことができたのかなあと。

不満は一切無く、とても大切なあの頃の仲間ですが、だからこそもっと彼等と遠くまで行ってみたかったと思いました。

青春の喜びとちょっとの痛みを想起させてくれるとても魅力的な青春小説でした。

期待通り、いや期待以上に面白かったです!