- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1998/08
- メディア: 文庫
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全体的にブラックな雰囲気を漂わせつつ、盛り上げて盛り上げて、最後にきっちり落として笑わせる。非常に構成が巧い短編小説集でした。
一つ一つの作品に。社会をある意味斜めに見た毒やら苦みがきっちり反映されたきらりと光るアイデアがあり、それが物語を通して、変質し笑いとなる構成は見事でした。舌を巻きました。
まさに「怪しくて」「笑える」、『怪笑小説』でした。
ただ、笑いというのは、送り手と同時に受け手のセンスの問題もあり、どんなに巧い小説でも、フィーリングが合わなければ物語は笑いへと昇華されません。個人的にはブラックの濃度が強すぎるネタは苦手なので、収録されている短編のうち『あるジーさんに線香を』と『動物家族』は毒の種類が僕の好みと合わなくて駄目でした。
逆に『無人島大相撲中継』や『しかばね台分譲住宅』はとても楽しめました。『大相撲』は最後のオチのあまりのくだらなさに、『しかばね台』はオチにいたるまでの住民の狂気と、斜め上すぎて想像できなかったオチの意外性に、腹を抱えて大笑いしました。大傑作です。
あとがきで作者がそれぞれの短編について解説しているのも良かったです。自分のギャグを自分で説明するという行為は寒くなりがちですが、基本はそれを書いたきっかけの出来事であったりをエッセイ風に語っているものなので、あとがきを読むとまた本編が読みたくなる、そんな相乗効果を持つ内容でした。
笑いというのはある程度鮮度がありますが、刊行が1995年とはいっても、今見ても十分面白い、普遍的な笑いを扱っている小説だと思いました。とても良かったです。