yukiakiの日記

映画とサッカーと漫画と猫が好きな男の生存確認ブログ 週刊少年ジャンプの全漫画の感想を書いて14年目

秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏』全4巻感想  高校生の時とかにもっと早く読んでおけば良かった。人生変わったかも


この小説がライトノベル界隈において名作と言われていたのは知っていたし、いつか機会があったら読もうと思っていたのですが、発売当時、高校・大学生くらいだった僕はまったく見向きもせず、十年ほどたった今、たまたま思い立って読んでみたのですが…面白すぎてやばかったです。

大人になって色々世の中の事情が分かってから読むのもいいですが、この作品は高校生時代のあの視野が狭いけれどとにかく色々考えていた多感な時期に読んでいたら、人生変わるくらいの衝撃を受けたんじゃないかなと思わずにはいられないくらい、痛く切なかったです。

正直僕は主人公の浅羽くんが伊里野を好きになった理由も、伊里野が浅羽くんにあそこまで固執する理由も良く分からなかったですが、日常が壊れたあとの浅羽くんの行動には共感することがとても多かったです。

女性に自身の怒りのためだけに拳を振るって、大人だから許されるとタカをくくり、それが裏切られたことにさえびっくりして殴り返さてボコボコにされる浅羽くん

創造もできない大きなものの存在に対して、何も知らないできないことに目を瞑って強がっても、結局萎縮動けなくる浅羽くん

一二万円という生活費で今日が乗り切れたから明日以降も将来もずっと大丈夫だと錯覚したあげく「セイカツノウリョクガナイノヨ」と見知らぬ小学生に言われて本気で怒る浅羽くん

全てを捨てて一緒になったはずの好きな子をその重さに耐えかねてぶっ壊してしまう(しかもそのあとめちゃくちゃ後悔する)浅羽くん

これらの行動は、もし仮に高校生くらいの僕が同じような立場に立たされた時、まったく同じことをなるだろうなと思う展開でした。ものすごくリアルでした。

だからこそ、そう言った自分の駄目さが全て露呈して、それでも一瞬だけ見せた男気「ぼくは、伊里野のことが好きだ」だけで全てが許される世界は(終わりは最初から分かっていた)、とても甘美で癒しで衝撃でした。

これぞ小説世界のカタルシス。ここではないどこかの、自分の物語です。

ただ、この世界観は甘すぎて、高校生当時に読んだらどうなるか分からないですね。その麻薬のような甘さにどっぷり浸かって堕落していくか、伊里野を本当の意味で救える男になろうと冒険を始めるのか。

ただそれはちょっと楽しみでもあったりするので、もっと高校生にくらいの頃に読んでいれば良かったなと思いました。

でも、今見逃さずに読めただけでも良かったです。起承転結4巻セットで一気に読めましたし。これは連載で読むより、一気に読んだ方が絶対面白いタイプの小説だったと思います。