yukiakiの日記

映画とサッカーと漫画と猫が好きな男の生存確認ブログ 週刊少年ジャンプの全漫画の感想を書いて14年目

佐渡裕『僕はいかにして指揮者になったのか』感想  佐渡さんがいかに演奏会が好きなのかがひしひしと伝わってくる本だった。

僕はいかにして指揮者になったのか (新潮文庫)

僕はいかにして指揮者になったのか (新潮文庫)

僕は中学校の合唱コンクールで一度クラスの指揮者をしたことがあります。僕は歌のパート別で練習では最後まで残されてしまうという超絶音痴でしたが(でも歌うのは好き)、目立ちたがりが少ない控えめなクラスでほぼ唯一の前に出ても緊張しないタイプだったこともあり任されました。音楽的指示とかは音楽の先生がやっていたので合唱中僕のすることは前で棒を振っているだけでしたが、クラスの練習の音頭をとったりして大変でした。そして本番、伴奏者が途中で間違えるアクシデントがありながらも最後までしっかりとリズムを刻んで歌を続け、伴奏も途中から復帰して(むしろ演出と勘違いされたくらい)なんとか合唱を成立させることができました。これはとても嬉しく良い思い出になりました。

だからと言うわけではありませんが、自分より経験がある演奏者たちを相手に、前に立って音頭をとることの怖さや緊張感、そして演奏がうまくいったときの歓喜が想像できて、佐渡さんはすごいなあと感心しながら読んでいました。

佐渡さんは音大の指揮科などに入らず指揮者になったという異色の指揮者ですが、そこには多くの幸運もありましたが、その幸運を引き寄せたのは彼が「欲しい音のためなら素っ裸になってもいい」ほど演奏会が好き、音楽が好きだったからだろうなということを文章を読みながらひしひしと感じました。

また、佐渡さんも相当面白い人ですが、師匠である小沢征爾さんやバーンスタインさんは、さすが世界の巨匠だけあって彼以上に突飛でスケールがでかさを感じさせるキャラクターでめちゃくちゃ面白かったです。

「一番大事なのは今自分が向き合っている分野が好きかどうか、楽しめているかどうかなんだ」ということを再確認させてくれ、とても勇気がもらえる本でした。