yukiakiの日記

映画とサッカーと漫画と猫が好きな男の生存確認ブログ 週刊少年ジャンプの全漫画の感想を書いて14年目

辻村深月『ふちなしのかがみ』感想  もがくほど這いあがれなきなる底なし沼のような感覚になる短編集だった

ふちなしのかがみ

ふちなしのかがみ

怪談やホラー話というのは基本的に理不尽なもので、その理屈では割り切れなさ、どうしよもなさが、いわゆる恐怖という感情に繋がっていくものだと思いますが、この短編集はミステリーの文脈で書かれているが故に、それがとても強調されているように思いました。

たとえば冒頭に不可解で怖い事件が起こります。それは話が進むにつれ、だんだんと事の輪郭や真相が見えてきますす。そして明らかになるラスト、それはちゃんと辻褄があっていて僕たちは「ギャー」と驚いたり「ふー、そういうことか」と安堵するんですが、そこでふと気がつくのです。あれ、この物語ここで辻褄があっちゃうとこっちがおかしくないか・・・と。

そうなったらもう抜け出せません。一見して一番気になるところが辻褄があっちゃっている故に、他もあうものだと思うとそうはいかない。その分からなさ、モヤモヤは考えれば考えるほど深みにはまっていて、それが恐怖になります。さながら底なし沼で必死にもがいているかのように、恐怖がだんだんと足下から体を浸食していく感覚を覚えました。

あー、怖かった。特に3番目に収録されていていた「おとうさん、したいがあるよ」はやばかったです。ちょっと自分の立ち位置が不明瞭になる感覚を覚えました。
最後に収録されていた「八月の天変地異」が爽やかな話だったのでだいぶ救われて良かったです。