- 作者: 辻村深月
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/07/01
- メディア: 単行本
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怪談やホラー話というのは基本的に理不尽なもので、その理屈では割り切れなさ、どうしよもなさが、いわゆる恐怖という感情に繋がっていくものだと思いますが、この短編集はミステリーの文脈で書かれているが故に、それがとても強調されているように思いました。
たとえば冒頭に不可解で怖い事件が起こります。それは話が進むにつれ、だんだんと事の輪郭や真相が見えてきますす。そして明らかになるラスト、それはちゃんと辻褄があっていて僕たちは「ギャー」と驚いたり「ふー、そういうことか」と安堵するんですが、そこでふと気がつくのです。あれ、この物語ここで辻褄があっちゃうとこっちがおかしくないか・・・と。
そうなったらもう抜け出せません。一見して一番気になるところが辻褄があっちゃっている故に、他もあうものだと思うとそうはいかない。その分からなさ、モヤモヤは考えれば考えるほど深みにはまっていて、それが恐怖になります。さながら底なし沼で必死にもがいているかのように、恐怖がだんだんと足下から体を浸食していく感覚を覚えました。
あー、怖かった。特に3番目に収録されていていた「おとうさん、したいがあるよ」はやばかったです。ちょっと自分の立ち位置が不明瞭になる感覚を覚えました。
最後に収録されていた「八月の天変地異」が爽やかな話だったのでだいぶ救われて良かったです。