yukiakiの日記

映画とサッカーと漫画と猫が好きな男の生存確認ブログ 週刊少年ジャンプの全漫画の感想を書いて14年目

為末大『走る哲学』感想  為末さんの繊細さにおそれいった

走る哲学 (扶桑社新書)

走る哲学 (扶桑社新書)

為末さんは頭がいい人だと思った。

本書は一日に一つのテーマを連続で呟く為末さんのツイッターをまとめた本であるが、何よりその使い方にまず驚いた。

140文字という制限があるツイッターでは自分の考えを表現するのはとても難しい。なので僕なんかは何を食べて美味しかったとか、サッカーの試合の中継をするくらいしか呟いてないし、暇な時間にボーとタイムラインを眺めている程度の使い方だ。

しかし為末さんはその140文字という制限をむしろ水泳の息継ぎのように調子良く使い、伝えたい文章を分かりやすく効果的にまとめていた。これだけでも十分ただ者ではない。

為末さんといえば、400メートルハードルで日本で初めて陸上のトラック競技でメダルをとった人であると同時に初めての陸上のプロ選手だ。

その偉大さは知ってたが、その成功の背景には、ここまで自分を客観的に見つめ、本当に哲学者のように考えていったんだということには素直に感心した。努力型とか天才型とか、そういうカテゴリではなく、とても繊細な人なんだと思った。

自己観察におえるツイートで印象に残ったことがある。

『大事なのは“諦めたくない”をどうやって作るか。“諦めるな”と“諦めてもいいんだよ”の間に“諦めたくない”がある』

陸上の才能とは別次元で、自分の中にこういうことを発見し、言葉にできる繊細さがあって初めて日本人でありながら世界のトップレベルに食い込めたんだなと思った。

内容的にはどれも密度が濃く、読むのが大変でしたが、為末さんの精神的ノウハウの積み重ねが、たとえ今回のように書籍を買わなくても、フリーで読めてしまうというのはとてもありがたいことだと思いました。

その共有精神、太っ腹さにも脱帽です。面白かった。