あらゆるジャンルに手を出す落ち着きのない映画監督、いい意味でも悪い意味でも古いタイプのコメディアン、議論の全てをひっくり返すような鋭い意見を述べるご意見番、子供のような発想の作品を次々と生み出す芸術家、たけし軍団の殿ビッグダディ、僕の北野武(ビートたけし)さんに対する見方は様々だが、こうやって書いてみると、これだけの多角的な面を一人の人間が矛盾なく内包していることに驚きを隠せないです。
そんなたけしさんに興味があって読んだのがこの本です。
Kitano par Kitano: 北野武による「たけし」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: 北野武,ミシェル・テマン,松本百合子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/03/05
- メディア: 文庫
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フランス人ジャーナリストの5年間にわたる数十回のインタビューから構成された本書は、たけしさんを知る上ではそうとう役にたつ本だと思う。とくに映画監督「北野武」については2010年までの彼の映画について彼自身が丁寧に語っていてとても面白かった。
僕がその中でも最も興味を引き、かつ意外だったのは、たえしさんが思った以上に観客や批評家の反応に対して喜んだり悲しんだりしている点だった。「俺自身が一番の批評家だから、他の奴が言ったことはどうでもいい」的なことを自身でも述べていてそれはきっと根っこの所では真実なのだろうが、映画が酷評されたりすると「残念で落ち込んだ」と素直に一喜一憂していて、ちょっと可愛かった。でもまあ、彼の映画がその時の自分自身を投影したものなのは明白なので、落ち込むのは当たり前だ。
読み終えて「北野武」について色々な事が発見できて、分かったような気がした反面、不思議に思うこと増えた感じがしました。
たけしさんがどうしてこれほどの情熱を持ち続けられるのか? 過去の体験をどうやって消化して昇華させて今のたけしになったのか?
ヒントは散りばめられていますが、どうしてもその節目節目ですっごいジャンプがあって、僕の思考では分からないことばかりです。
でもまあ、そんな理屈では割り切れない、不思議さがたけしさんの魅力なのかなと改めて思いました。