トーマの心臓 Lost heart for Thoma (講談社ノベルス)
- 作者: 森博嗣,萩尾望都
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/10/07
- メディア: 新書
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萩尾望都先生の『トーマの心臓』はドイツのギムナジウムを舞台に描かれた愛についての傑作漫画で、僕も学生時代に読んでおおいに衝撃と影響を受けた本です。
森博嗣先生のノベライズした本作は彼自身の科学的・合理的視点が物語のなかに多分に入り込んでいて、それがもともとの作品のなかにあるテーマを、人によってはかなり分かり易くかみ砕いていると感じるだろうし、人によってはまったくの台無しにしていると感じているだろうなと思いました。
僕は大学で物理学を専攻していたので、森先生の解釈はある程度僕自身の考えに似ていてよく分かりました。「愛」という難しいテーマ、言葉にできないものをよくここまで言葉にすることができたなと感心してしまいました。
僕は趣味で小説も書きます。小説は情景を描写するだけでなく、言葉にできないもの(テーマともいう)をあえて言葉にするという表現方法だと思っています。
『トーマの心臓』を読んで僕が貰った(抱いた)であろうかけがえなのないもの、それと似たような何かを森博嗣先生は本作でオスカーという一つの視点を使って描いたと思うと、とても興味深かったし、それは実際に成功しているなと感じて、なんだかとても羨ましかったです。
(追記)これを読む人は、必ず先に漫画版の原作を読まなければ駄目だと思いました。でないと色々意味が分からない所が多いと思います。