yukiakiの日記

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京極夏彦『死ねばいいのに』 感想 遠くでなく近くでもない僕たちだからこそ面白い物語

死ねばいいのに

死ねばいいのに

人は他人のことが分からない。いや正確には自身の都合や思い込み、勘違いでどんどんその相手の本質から離れていってしまう。そしてそれは他人だけに限らず自分自身のことに対しても当てはまるのではいか。・・・そんなことを考えさせられた作品だった。

物語は一人の女性、鹿島亜彩美の死に対し、青年、渡来健也が関係者に彼女の素性を尋ね回るというものだ。文章は渡来健也が訪れた相手の一人称で書かれている。

彼が尋ね歩く人々は皆が皆一癖持っている。何かを隠しているし、鹿島亜彩美の事を色眼鏡で見ている。そして自分ではその事に気が付いていない。

そんな彼らが、ある意味正直で物事に対しニュートラルな価値観を持っている渡来健也との会話で、まるで塗り固められた石膏がボロボロ落ちていくように嘘を剥がされ、自分でも気が付かなかった本音をさらけ出していく様は、他人の浅ましさを覗き見ているようでとても滑稽であり、自分自身に照らし合わせると似ている部分があって恐怖感があった。そこには背徳のカタルシスと言うべきものがあり、とても読み応えがあった。

ジャンルを聞かれると難しい作品であるが、遠くの出来事と思えば滑稽で面白く、近くの出来事だと思えば少々怖い。それは僕の中では「ホラー」だ。

とても面白いホラー作品だったと思う。